古書や骨董が好きです。歴史など調べるのことが好きですが、結構あきっぽく中途半端です。素人ですが、見たこと、聞いたこと忘れないうちに書いておきたいと思います。
by ふく
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玉筋魚釘煎

そろそろ、いかなごも大きくなってまいりました。
このところ、イカナゴ釘煮発祥の地の碑のある塩屋にいくことが多いので、
機になり、イカナゴの釘煮にかかわる本を一冊買いました。

「玉筋魚」と書いて「いかなご」と読みます。
そして「釘煎」=「くぎいり」でしょうか。



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写真は魚谷常吉さんというかたが昭和10年に書かれた『滋味風土記』に載っている
「玉筋魚釘煎」についての随筆です。
現在のイカナゴの釘煮のルーツと関係がありそうな記述が見られますので、ご紹介してみることにしました。


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玉筋魚※1は春から夏いっぱいの間、明石近海より四国にかけて多量に漁れる魚で、形は針魚を小さくした様なもので、大きさも精々三寸(9.09cm)位までが旨く、それ以上のものは、余り喜ばれない。味がよいにも拘わらず、唯漁獲高が非情に多いのと、腐敗が早いために余り珍重されない。所によっては醤油を造ったり※2、肥料にしたりする位で、ちょうど鰯と同じような立場にある気の毒な魚である。一番旨いのは春先の小さい頃に網から上げ未だ活きて躍つて居るのを、塩茹でにして、二杯酢で食ふので、その外、この塩茹したものを胡瓜揉と和へて矢張り二杯酢で頂く。飯の菜にする時は、この一度茹でたもの、或いは活きたものを網にのせて焼き乍ら、生醤油をつけてい頂く。これも相当旨い。然し初夏の候、玉筋魚が大きくなつてから釘煎にしたものは、玉筋魚料理の中でも最も美味のものである。酒によし、飯によく、其の上保存が利くといふのが嬉しい。近頃はオイルサーデンで日本一の名を挙げた明石の水産試験場※3で、飴煮を試作して、大工場や兵隊などに多量に供して居るが、私は飴煮も結構であるが、釘煮を賞味したい。製法は至つて簡単で、玉筋魚一升に対し生醤油五合砂糖五十匁で煮詰めればよい。要は玉筋魚の生きたのを選ぶだけである。従つてこの死に易い魚を材料とするのであるから、漁場でなければ出来ない料理で、若し入用ならば、兵庫の駒ケ林漁業組合か、明石の垂水魚市場へ頼めば送ってくれる筈である。決して商人に頼まず、漁夫の手製のものを求めるやうにせねば、肉の引き締つた、底味のある本当の釘煮は得られない。
 玉筋魚に似たもので、大分県佐賀県にキビナゴといふ魚が饒産する。栃の人は余り顧ず、下層階級の食物になつて居るが、これも玉筋魚と同じ方法で、釘煮にすれば相当に旨く頂けるのである。栃の人に教へてやつた処、試作して、紡績工場へ売り、味もよく、価格も安いので、大変喜ばれ、自分も今迄にない楽な盆節季をしたと、喜んで礼を云われた事がある。

※1 玉筋魚【玉=筋=魚/×子】スズキ目イカナゴ科の海水魚。全長約25センチになる。体は細長く、やや側扁し、腹びれはない。背側は青く、腹側は白い。内湾や浅海にすむ。小さいものをつくだ煮にするほか、養殖魚のえさに利用。こうなご。かますご。(大辞林)
※2 塩漬けにして醤油にしたものは香川県にある。以下に例をあげます。
http://www.wasyoku.net/shop/ikanago/index.html
※3 明石水産試験場とオイルサーディンの関係については不明。以下のブログが加工食品の歴史について書いている。
http://ameblo.jp/tomatobarrow53/day-20120207.html
水産物の缶詰め加工については以下
http://www.jca-can.or.jp/honbu/200anniv/can200table.pdf
※4長田区の駒ヶ林はもともと漁港でした。
http://blog.goo.ne.jp/kimmy_v-kobe/e/cce5eb21586bb19b59e9faf6850314a2

※※一部旧かな使い、漢字などを改めさせていただきました。脚注は筆者です。
※※※釘煮のルーツについては下のページが詳しいです。
http://hyochin.com/knowledge/post-10.html

魚谷常吉(1894-1964)は料理人で、神戸で「西魚善」という料亭を経営していたそうですが、この本を書いた後、昭和16年、40代の後半で出家、和歌山県の宝光寺の住職となり料理の世界から退きました。

随筆は「神様が、我々人間共に、食ってよいと、結構な食物を沢山お許し下さって居るにも拘わらず、これを頂かぬのは、折角の神様の音恵みに対し、何とも申し訳のない次第である」という自序にはじまり、全国の其の土地にしかない特殊な料理法を求めて全国の滋味を紹介するという構成になっています。東京の鰻蒲焼をふりだしに、天城の山葵、名古屋の其子麵、大阪の船場汁と鯨鍋、灘の酒、神戸肉、蛸の鋤焼...山陽、山陰、東北、九州と...百十六の随筆がならびます。戦争をはさんで絶滅してしまったのか知らない料理も多く、またてんぽのよい文章で、読むのが楽しくなります。

1000円で入手しましたが、お得感ありです。
もう一冊、かつて中公文庫におさめられた『味覚法楽』、こちらは未読ですが、
アマゾンで95円からあるようですので、近いうちに読んでみたいと思います。


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ところで、イカナゴの釘煮ですが、
誰がいつどのようにして始め、命名したのか、
この随筆だけからは不明ですが、

今私たちがよく釘煮といっているよりももう少し大きないかなごを
煮て、「釘煎り」と明石付近では
昭和10年頃には既に明石付近にはいっていたということはわかります。

その頃阪神間でも、かますごというある程度大きくなったいかなごを
ゆでて、二杯酢で食べていたという話は祖母から聞いたことがあります。
醤油であまからく煮るのは琵琶湖のごりで、
海の魚をあんな風にしては食べなかったともいっておりました。

今のように流通網が発達する前は
鮮度の保てないイカナゴは魚谷常吉さんがおっしゃるように、
駒ヶ林や垂水であがっていても、
阪神間にすらとどきませんでした。
あるいは阪神間であがったとしても、
そんな食べ方は伝わって来なかったようです。
知る人ぞ知る地元の料理が、流通と新聞やテレビ、雑誌、さらにはネットによって広がり、
ポピュラーな関西のお料理になっていったということかと思います。
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by shukugawans | 2012-03-29 23:46 | おいしいもの | Trackback | Comments(1)
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Commented by 履歴書を書く at 2013-12-26 12:17 x
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
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